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震災より半年後に書いたもの

1:従業員N :

2023/03/09 (Thu) 13:57:52

もうすぐ、あの震災の日。
ここの書き込みでは1年に1日だけ、この日が近づくとこの文章を載せております。東日本大震災から12年。改めまして被災した方々の心情を察します。ご一読いただければ幸甚に存じます。
震災より半年後に書いたもの。

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ほぼ柱だけの4階建てビルにとまる無数のカラスと、意識をつんざくような鳴き声が印象に残る。
辺りの建物は一様にガラス戸や壁が壊され、そこには電柱や材木や自動車までもが突き刺さっていると同時に数々の家具が飛び出ている。ベッド、タンス、食器棚、布団、食器、カーテン、玩具・・・。
現在でも震災の行方不明者数は四千五百人以上。昨日の発見が九名。今もなお多くの方々が埋葬もされずにこの様な家の隅っこに佇んでいるのだろうか。
電気の復旧は遅れていて信号すら点灯していない。私が歩いているまだ薄暗い早朝4時の交差点には、発電機で動く工事現場用ランプだけが無人で稼動し、異様なほどの明るさを呈している。このランプが無ければ崩れた壁や家、倒れた電柱の中を歩くことは容易ではないだろう。
雨上がりのせいもあり、揺れ動くにおいも鼻につく。

あの日からもうすぐ半年が経つというのに・・・。

まるで古墳のような高く積まれた俗に言う「瓦礫」は、果てしなく続いている。
延々と続く高台の塊の所々に、ハギレとなって入り込んでいるブルーシートなどの青色だけが、やけに目に付く。
夜が明けてくると、巨大な壁のような貨物船が陸上にくっきりと浮かび上がってきた。津波で打ち上げられた大型船のうち二番目に大きい物で、確か4,700トンとテレビで何度も放送していたのを記憶している。

何度か地元の方々と話す機会があった。
「ここは179世帯あったが、いま人が居るのは30世帯くらいかな。俺の家は流されちゃって跡形も無い。それで不思議なことに俺の流された家は全く見つからないんだよ。屋根が有ったと町から連絡があって見に行ったんだが、うちの屋根っていえばそう見えるし、違う風にも見えるだ。屋根なんて似たようなもんだからさ、ははは。それでそれ以来、他には何にも見つからないんだ。どこまで行っちゃったんだが、本当に不思議だよなー。
あの3件の家にまたがって突き刺さっているもの、あれなんだと思う?」
「ん、、鉄塔ですか?」
「あれは、あの向こうのずーっと遠くにあった歩道橋だよ。すごいもんだよなー。」

バスの移動は、家の基礎だけが点々と残された地域を何キロも通り、向きを変えると倒れて崩れ落ちた巨大な防潮堤。
そしてその先にはリアス式海岸。
独特の地形と海面から突出た岩々、そこに生きる青々とした木々、何よりもリアスの海は静かでこんなにも美しい。

太陽は昇り続け、朝の時間が徐々に過ぎていく。今はがらんどうとなった無機質な町並みのバス停にも中学生や高校生が並ぶ。良く見ると道端には夏草が我関せずと育ち、また新たな草木も芽吹いている。

被災され残された家や車の多くには赤のスプレーで『解体OK』と書かれている。
いろいろな書き方もあった。『解体してください』『解体してくれ!』『解体しよーぜ!』『これはもう解体しかない!』等々。

被災地。
きっと、私達のような他県からの災害ボランティアなんていなくても、この町は力強くどんどん復興していくのだろう。
そして、復興に対してほんの塵にも満たないものであったが、携わることが出来た事もまた不思議な縁だ。(本当に塵にも満たないのは、あの被災地を見れば紛れも無い事実だ。)
ただ、もう少し復興支援をさせてもらってからは、今度はあの美しい海に家族で旅行に行こう。三陸の美味しい魚も食べたい。

帰路に寄った道の駅。
私達が店内を回っているとレジの女性が話しかけてきた。
「ねえ、ボランティアの人達?」
「はい、そうです。」
女性は一度奥に入ってすぐに戻ってきた。そして、私達一人一人に手作りのお菓子をくれた。
「はい、来てくれてありがとう。」

「ありがとう」
私はそのお菓子を手のひらにしっかりと受け取った。

                         従業員N


【震災・原発事故12年 復興を問う】<岸田文雄首相> 処理水放出開始、自ら決断 判断基準「数値目標はない」
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